書き散らし

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喫茶店のコーヒーは1日を豊かにする【日記】

 ここ最近引き篭もりがちな土日。今日はせっかくなので気になっている近所のカフェに行こうと思い立ち、おやつの時間も過ぎた頃にふらっと出かけてみた。

 そこは大通り沿いに位置している、カフェというより喫茶店というべきレトロな外装のお店だった。大通り沿いであるにも関わらずひっそりと建っており、営業しているのか営業していないのか一見するとわからないような隠れ家のような喫茶店だった。

 ドキドキしながらドアを開けると中はこじんまりした外装に反してゆったりとした開放感のある内装だった。

 暖かみのある落ち着いた照明に年季の入ったダークな色合いの木製の家具。壁にはアンティーク調のポスターが貼られ、5席ほどのテーブル席にはぽつぽつと客が座り思い思いに時間を過ごしている。

 案内された席に座り、「本日のコーヒー」を注文。品物が来るまで、読もうと思いつつも家ではどうも気が進まなかった資料に目を通す。

 運ばれてきたコーヒーはどっしりとした深みのある味わいだった。初めて飲むタイプのコーヒーかもしれない。一緒についてきたシナモンの香りがするビスケットと一緒にいただく。

 コーヒーの苦味とビスケットの仄かな甘味とスパイスの香りがたまらなく合う。とろりとした飲み心地とサクサクとした食感のバランスも良い。ゆっくり楽しむつもりがあまりインターバルを挟まずに飲み終えてしまった。

 飲み終えた後にコーヒーが今まで入っていたカップを眺める。柔らかさのある滑らかな白い陶器。飲み口は厚く、ラインは直線的で当然ながら持った感触は重め。このカップの厚さと形状はこの深煎りのコーヒーのために作られているんだなと俄知識で知った振りをしながらそっとカップを撫でる。

 席の利用時間は土日祝は1時間程度と決められていたため、残りの時間を資料の続きを読むことに費やす。成果は問わないにせよ、時間が限られていたことで集中することができ、読もうと思っていた分は読み終えることができた。

 店内は心地の良い上質な珈琲の香りがした。微かに花のような甘い匂いも混ざっており資料を読みながら密かにその匂いを楽しんでいた。

 先客がばらばらと席を立った。どの客も店主と軽い会話を交わしながら会計を済まし、退店していく。私も何回か来店すればそんな常連になれるだろうか。

 来店してから1時間ほど経過し、私も席を立った。改めて店内を見渡し、落ち着きのある空間に名残惜しさを感じながらお会計をする。

 外に出ると日は完全に落ちる一歩手前で、雪がしんしんと降っていた。

 私の住んでいる場所は豪雪地帯だ。建物にも街路樹にも電線にさえ余すところなく雪が積もり、道路は歩道も車道も雪に覆われて真っ白だ。車道の脇は除雪された雪が大人の姿を隠すほどの雪山となり、それがずっと道なりに続いている。

 そんな既に雪に埋もれかけの町にさらに雪が降っている。

 雪はその地域の住人にとっては困り物だ。除雪をしないと車は出せないし道路は狭くなって渋滞するしストーブの排気管を埋めてしまったり、他にも挙げたらきりがないくらい厄介ごとを引き起こす。

 しかしながらこうして雪の降る中を歩いているとやっぱり冬は雪があってこそだと思う。豪雪地帯の雪は美しい。気温が低いから降りたての雪はふわふわだ。それらが積もり、時間が経って固くなる。さらにその上にまたふわふわの雪が積もると家の屋根も、植え込みの木も、道路沿いの雪山もまるでミルクと粉砂糖をかけたような滑らかでふんわりした風合いになる。そしてそれらの表面は夜でもキラキラと光っているのだ。

 そんな雪景色の美しさを改めて実感しながら20分ほどの帰路を辿る。家に着く頃にはすっかり日が落ちて夕方の薄暗さから夜の暗さになっていた。

 私の住んでいるアパートは築20年近くの昔ながらの雰囲気を醸し出しているアパートなのだが、レトロな喫茶店に行った後だといつもの我が家もあの昔ながらの世界観がまだ続いているように思わせてくれる。

 2時間にも満たない外出であったが、「今日は良い1日だったな」という充実感を得ることができた。またあの喫茶店を訪れたいと思う。

 

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